なぜかというと、素敵な人に出会ったので伝えたくて。
その日私は、所用で初めての場所に朝7時30分までに行かねばなりませんでした。
電車を乗り換え、バスに乗って。
『バスで5分ってなっているから、歩いても行けそうだな。帰りは歩いてみよう~』
寝坊しないか、乗り過ごさないか、心配していたものの順調に早めにバス停に到着。
すると1時間に2本しか出ないバスが、もうバス停に。
行き先を確かめて乗り込み、読みかけの本を開きました。
「○○経由、××行、出発します」
アナウンスがあり、バスが動き出します。
あれ、もうそんな時間だったんだ。
不思議に思いましたが、ちょうど面白いところだったので、本を読み進めてしまいました。
でも、乗り物酔いするかもと、ふと、前方に目を向けると、
電光掲示板に停留所の案内が。何気なく見ていましたが‥
『あれ?え!?なんで!??ない?!無い!!!』
目的地がありませんでした。
慌てて時計を見ると乗る予定のバスが発車する前の時間!やってしまった!!
すぐにボタンを押し、バスを飛び下りたものの、
ここどこ??
休日の7時前の住宅街はとっても静かで、車も通りません。
ああ、運転手さんにどうしたらいいか聞いてから降りればよかった。
それよりも乗る前に目的地に停まるか確かめてから乗ればよかった。
駅に戻るバスを待っていたら、本来乗るはずのバスに間に合わない。
うう。後悔してももう遅い。
まだ時間はある。そうだ、歩いても行けそうだった、と、スマホの地図を開き、
乗るはずだったバスの停留所があったらそこから乗ろう、タクシー通ったら乗ってもいいし。
と、取りあえず歩き出しました。
けれど、しばらく歩いてもずっと住宅街。なおかつ地図上の現在地が全く動かない。
そうか、いつもと縮尺がちがうんだ、やばい、これは悠長に歩いている場合じゃないかも。
タクシー会社調べようか。でも呼ぶにも時間がかかるかもしれない。すぐ来ないかもしれない。
ここの場所どう説明すればいいのか‥焦り出した時にちょうどご婦人とすれ違いました。
「スミマセン、★に行きたいんですけど、こちらの方角であってますか?」
「★?歩いていくの??遠いわよ。」
「バスを乗り間違えてしまって。慌てて降りたんですけど、歩いては行けないですか?」
「そうね~、行けなくもないけれど、ほんと遠いわよ。
どうやって説明したらいいかしら。ちょっと説明しづらいのよね。
方角としてはあっちの方なんだけれど。歩いたらかなりかかるわよ。
駅に戻ってバスに乗るのがいいと思うわ。」
「そうですか~。戻ってたら集合時間に間に合うバスに乗れなくて。
タクシー通らないかな、と思いながら歩いていたんですけどなかなか通らなくて。」
「そうよね~、どう説明したらいいかな。△道路を渡っていくんだけど‥。
‥そうね、いいわ、私車で送ってあげる。」
「え?そんな!」
「いいわよ。今日何も予定無いから。」
「え!でも‥」
「大丈夫よ。」
「あの、すみません。ありがとうございます。ほんとにいいんですか?」
「いいわよいいわよ。家もすぐそこだから、ついてきて!」
「ほんとに助かります。ありがとうございます!」
われながら図々しいと思ったのですが、
にこやかに歩いて行くご婦人のお言葉に甘えることに。
それにしても、見ず知らずの通行人に道を聞かれて、困っているからと車を出してくれるなんて。
なんていい人なんだろう。ご婦人が女神さまに見えました。
「この角曲がったら家よ。今車の鍵を取ってくるわね。待ってて。すぐだから。」
「すみません。ありがとうございます。」
「さ、乗って乗って!」
車を走らせながらも、私を安心させるように、通りの名前や、目的地までの時間を教えてくれ、
私に気遣わせないように、のんびり散歩してたところだった、今日は特にすることないから
と、いろいろ話しかけてくれました。
「何時までに行けばいいの?ああ、それなら大丈夫ね。充分間に合うわ。
歩いていたらきっと間に合わなかったわよ。」
「そうですね。こんなに遠かったんですね。あまりバスにも乗らないので、
どのくらいかかるか見当が付いてませんでした。
乗った時も、目的地だけ見て合ってると思い込んでしまって。
経由がいろいろあるんですね。」
「そうよね、気づいてよかったわね。それに私に会えてラッキーだったわね!
今日はいい日になるかもしれないわよ! もう着くわ。そこでいいかしら。」
「はい。ほんとに。ほんとに助かりました。ありがとうございます。
あの、せめてガソリン代だけでも。」
「いいわよいいわよ。ほんといらないから、早く行きなさい。頑張ってね!」
ご婦人、その節は本当にありがとうございました。
おかげさまで、無事、用事に間に合いました。
感謝してもしきれません。このご恩は忘れません。
私も困っている人を見かけたら、助ける人になりたいと思います。
ありがとうございました!!!
強く心に誓ったその翌日。
スカートを自転車に巻き込み、一人では引き出せず動けなくなったところを
通りがかりの女性が自分の自転車を降りて来てくれ、またまた助けられたのでした。
その女性も、手伝おうとしてくれた女子高生も、助けてくれてありがとう。
あやうく大通りでスカートを脱いで引っ張り出すことになるところでした。
ありがとうございました。
そして私は
助ける人になる前に、人様にご迷惑をかけない人になれるよう頑張ります。
‥反省。